アポリカ!通信 2025年4月:『No Student, No Cramming いつまで詰め込み続けるのか』

 何年ぶりだろうか。先月、久しぶりに某英語検定の面接官を担当した。

 面接した受検者たちは、午前中がCEFR B2(英検準1級レベル)で、高校生から社会人、シニアまで幅広い年齢層だった。10人余りだったと思うが、どの受検者の話力も非常に高く、不自然な間を置かず、自分の考えを流暢に話す様に大変感心した。午後はA1相当の初級者で、小学生からシニアまでさらに幅広い。立つ位置や、座る椅子を間違えたりして、スピーキング力より緊張感がこちらに伝わってきて、評価しながらも応援する気が湧いてきてしまった。

 受験者たちにどんな背景があって、どんな学習法を採っていたのかは分からないが、彼らB2レベルの受検者に共通していたのは、帰国子女、いわゆるネイティブのような完璧な発音・アクセントというよりは、日本人らしいそれだった点。

 

 TOEICという民間試験もよく知られている。日本では、一般的にL&R『聴く、読む』というインプット面のテストとが企業などの人事評価に採用されているが、S&W『話す、書く』、つまりアウトプット面のテストについては、あまり語られない。私も自身も、受けたことがない。

 こんなデータがある↓

※IIBC 国際ビジネスコミュニケーション協会 2024年7月31日 プレスリリースより

https://www.iibc-global.org/iibc/press/2024/p258.html

お隣の韓国でもTOEICが根付いているようだが、日本と違うのは、S&Wの受験者がはるかに多く、平均点もそれぞれ15点も高いことだ。※2023年 満点は各200点

日本  

スピーキング 114

ライティング 129

受験者数 約37,000人(※2015年は約26,000人)

韓国 

スピーキング 127

ライティング 149

受験者数 約30万人以上(※2015年)

 S&Wは比較的受験料も高く、L&Rのように『解く』ような問題とも異なるので、心理的な障壁も高いように思う。立場的にやることが多いが、気が向いたらそのうち受けてみようかな、と思う。

 TOEICはさておき、英語教育を学校に任せるのにも限界があるので、我々も含めて民間企業や塾が様々な努力をしてきた。が、英語を話せるようになる為に必要な、いまだに「話したい」という姿勢が、生徒たちに弱いように思う。「恥ずかしい」を上回るべきなのに。

 さて、つい最近、近くの大手塾、通称『◯◯アカ』に通う中学生が、体験レッスンに来てくれた。色々と話を聴くなかで、なるほどね!と腑に落ちる点が二つあった。

 まず第一に、文法と単語の詰め込み、そして入試問題に特化した独特のカリキュラムだ。うちと同じ教材を使っているのでよく分かるが、最後の方にある単元『会話表現』『重要な連語』『発音・アクセント・文の読み方』が、全てカリキュラムから抜け落ちているらしい。大手上場企業なので、ときわ台教室の判断で、というわけではなく、全ての◯◯アカですっぽりと割愛されていると思われる。

 なぜかと考えてみると、まずは彼等が『意味がない』と考えているからだろう。難関校の入試にはリスニング問題が出ないこともあるし(※早実にはあるが、学院にはない)、発音・アクセント問題は多くない。次に考えられるのは、教えられる講師が少ないからだろう。文法指導に偏り、単語の詰め込みを熱く語る講師(YouTuberにも多い)は、有名講師を含めてカタカナ発音が多く、おそらく英会話力は高くない。

 第二に、異常な勉強量。同様の文法テキストを何と3種類も持っていて驚いた。難関とはいえ、文法を習得するのに、テキストをうまく使えば一種類、多くても二種類で十分だ。そんな時間があったら、ライティングなどの対策をした方がよっぽど生徒のためにもなるだろうに、、詰め込み教育に勤しむ彼らに、添削指導をする技術も余裕もないのか?分からない。

 勘違いをしてはいけないのが、受験はあくまで人生の通過点。学びに終わりはない。受験生に云うべきは、「受験が終わったら遊べるよ」ではなく、もっと楽しく学べるよ、とか、学びたいことが学べるよ、ではないか。社会で生き残るため、好奇心や知識欲を満たすため、世の中をより正しく理解するため、問題を解決するため、そして夢を実現するためにも、学ぶことは生涯続く。

 私の知る限り、うちの塾で勉強し過ぎて燃え尽きた生徒はいないと思う。英語だけでなく他の教科にも言えることだが、最初のうちは苦手でも、受験を乗り切って、むしろ高校や大学に入ってから伸びる生徒が多い。東京大学に進んだNさん、立教大学に進んだMさん、都立大学大学院に進んだYさん、、初めは自信を持てなかった人たちも、今では英語に困っていないらしい。

 同じ『合格』でも、本人のキャパを超える量の詰め込み勉強で燃え尽きる生徒と、学ぶ楽しさを知り、学ぶ意欲を持ち続ける生徒。どちらが正しいか、問い続けたい。