アポリカ!通信 2024年10月:『READING Leads & Rules』

 A党総裁選の結果が出た。新内閣の女性閣僚は5人から2人に減ったそうだ。でも元々、A党の女性議員比率は10%強程度だそうだから、19人中2人というのは別に驚くことではなく、そのままA党の縮図なんだ。国会議員の女性比率30%が目標だって言っていたのに、女性のリーダーは減っている。

 「ダメだこりゃ…」だ😫

 そういえば、、内部レターでフィンランドの教育について書いたことがあったのを思い出した。2022年5月だった。

>>フィンランドの首相が来日。

マリン首相は、現在36才の女性。何と34才で首相になったらしい(当時の世界最年少記録)です。日本の政界では、まず起こり得ないでしょう…。

 自分なりに、今の状況を予想していたというか、..失望感は増すばかりだ。ちなみにうちの塾スタッフの女性比率は、フルタイムが33%、パートタイムが43%だ。男ばっかりの塾業界でも頑張ってるんだから、政界も何とかしてほしい。

 レターでフィンランド教育の特徴について大まかにまとめたものを、ついでに抜粋。

>>フィンランドの学校教育について

・小学生のうちはテストも宿題もない(その代わり?読書量が世界一)

・クロスカリキュラムという教科横断型学習

・16才まで全国統一テストなし、高校入試もなし(卒業認定試験はあり、ほぼ全て記述式)

・義務教育でも留年あり

・私立学校なし

・校則がほとんどなし

・教員は修士課程必須(学士3年、修士2年)、人気職のため倍率高騰(教師が尊敬される)

・中学を卒業したら『高等学校』(約60%)と『職業学校』(約40%)に分かれる

・プリスクールから大学院まで無償教育

 宿題がない、休みも多いのに、何でそんなに学力が高いのか、というと、その要因の一つに『読書』があるらしい。世界一の読書量。

読書好きが多いフィンランド 市民にとって公共図書館はどんな存在?

https://fika.cinra.net/article/202105-oodi_gtmnm

 つい先日、高2のAさんが模試結果を見せてくれた。苦手だった英語も一年掛けてだいぶ良くなり、模試の偏差値も60を超えて、志望校合格も徐々に現実味を帯びてきた。物静かな大人しい子だったのに、だいぶ話してくれるようになってきた。私立理系志望で、(受験科目ではないのに)国語の成績がよいのは何でかな?と訊くと、間髪入れずにこう言った。

 「小説を読んでるから… 東野圭吾とか」

 さて今年も読書の秋だ、ということで、自分も手始めにガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』を読んでみた。ブエンディア一族の、波乱万丈、壮大で刹那的な物語。ときわ台(唯一)の本屋、イトマイさんの客席の脇に並んでいるのを見て以来、ずっと気になっていた作品を、ようやく読む気が湧いてきた。

 まぁしかし、評判通りというか、読みにくい笑 登場人物が多くて、しかも名前が似ていて紛らわしい。どれくらい紛らわしいかと言うと、、、

ホセ・アルカディオ・ブエンディア

ホセ・アルカディオ

アルカディオ

ホセ・アルカディオ・セグンド

ホセ・アルカディオ(法王見習い)

 ↑これは全て別人の名前だ(同じ家系ではあるが)。さらにアウレリャノ・ブエンディア大佐、アウレリャノ・ホセ、ほか17人(?!)のアウレリャノ、アウレリャノ・セグンド、豚の尻尾のアウレリャノ、、と続く。

 私のように戸惑う読者の為か?、巻頭に家系図一覧が載っている。何度も何度も、まるで道に迷いながら手に握りしめる地図のように見返す。人物の特徴や出来事をメモしながら、頭の中でイメージを練り上げて、少しずつ読み進める。ありそうでない非日常的な生活をベースに、突然起こる事件や神秘が織り成す物語が、一族の歴史として終わる。

 読み終えた後の、読了感に浸る。不思議と読み疲れはなく、むしろ頭は爽快で、気持ちがいい。まだ登ったことはないが、富士山に登って下山した後のような気分なのかもしれない、と勝手に推測する(高尾山より高い山に登ったことはない)。その日だけかと思ったら、2週間以上経った今も、気分がいい。しんどい夏期講習が終わったのもあるかも知れないが、概ね読書の効果ということにしたい。

 一昔前は、至るところに本屋があった。それが、テクノロジーの革新、デジタル化、プラットフォーマーの出現などで、次々と店をたたんでしまった。自分の母校の目の前の本屋も、あの交差点の角の本屋も、駅前商店街の本屋も、姿を消した。

 フィンランドで読書離れがどれ程進んでいるのかは分からないが、こんなニュースが目に入ってきた。

フィンランドの学校で始まった「脱デジタル化」 ノートPC無償配布も、学習成果は低下

https://jp.reuters.com/video/watch/idOWjpvC832SMPMY327Q5HYTSEJMUQL3W/?chan=oddly-enough

 「本より動画の方がいい」というYouTuberがいる。『そういう時代だから』という理由で、読書より動画を助長するかのようなことを言う人もいるが、単に自分の動画を見てもらいたいから言っているだけのポジショントークに過ぎず、どんなに視聴者が時間を奪われようが、脳が劣化しようが、それを心配してくれることはないし、視聴者はそれに気付くこともおそらくない。

 子どもたちは、本を『読まない』というより、『読めない』のかも知れない。ひょっとしたら、『読み方』が分からないだけなのかも知れない。

 本の良さは、まず自分のペースで読めることだ。あれこれ考えながら、前後をある程度自由に読み返すことができる。いったん読むのを止めることもできるし、じっくり読むことも、速く読み進めることもできる。つまり、速さや時間を自分で制御することができる、とも言える。これは、動画やオーディオブックでは難しい。そして時間を制御できる、ということは、自分で論理を積み上げたり、場面を想像したり、登場人物にシンクロしたり、という知的な行為が自由にできる、ということだ。

 『百年の孤独』を読み終えて、次は、、、と調べてみると、何やら『ルックバック』という映画がすごくいい、と聞いたので、どれほどのものかと、まずは漫画を読んでみた。内容についてはここでは書かないが、たった1巻だけの短編なのに、1本の映画のようだった。漫画を描くことに対する愛や熱量。才能と努力。出会いとタイミング。好きなことや、何かを表現する力。生みの苦しみと喜び。人生のエッセンスについて、リアルに考えさせてくれる、稀有な作品だと思う。漫画家の方々への敬意がさらに増す。

 早速、中1の倅にも勧めてみた。一回目に読み終えた時は、反応があっさりとし過ぎていたので、何回か読み直してみたら?と勧めたら、やはり二回目の方が理解が増して、感想めいた言葉が出てきた。名作は、何度読んでも新たな発見がある。批評ごっこのような会話を交わして、作品に対する理解が深まる。映画について調べてみると、近くの劇場でまだ上映していたので、その翌週、一緒に観に行った。漫画に忠実ながらも、映像にしかできない技術を効果的に使っていて、一時間弱と短いながらも、いい作品だった。遅刻して最初の3分を逃してしまったのは悔やまれる…😔

 その二週間後。たまたま倅が(イヤイヤながら)英検を受けてもいいというので、過去問のエッセイを書かせてみたところ、偶然だが、こんなトピックだった。

 ‘These days, many novels are turned into movies. Do you think the number of such movies will increase in the future?’

(最近では、多くの小説が映画化されています。そのような映画が、将来増えると思いますか?)

 今までの彼の英作文で一番の内容だったのは、当然というか、必然だろう。偶然と必然を繰り返し体験し、考え、表現しながら、人生は続く。

 芸術の秋。みんな、しばらくスマホを忘れて、本と映画を体験しよう!

※コラム画像:1年前にイトマイさんのご厚意で生まれた、読書の秋・期間限定アポロン棚。生まれて初めてポップを作りました笑

(だめだこりゃ、からの… R.I.P.)

(ベーシスト繋がりで Thundercat)